昨年後半期より、尖閣諸島を狙っての行動が続いている中国では、沿岸警備隊による艦船航行行為(哨戒行動)に加え、海軍の艦艇や、空軍の航空機を使った示威行為を行っていることが判明した。このような行為に対し、日本政府はアメリカとの連携を強化した動きを取っている。
このような動きを見ると、どうも中国では共産党の統治能力が低下しているというより、習近平国家主席のもとで恣意的に行われていると見たほうがいいようである。というのも、習近平国家主席のもとでの外交交渉というのはあまり表面化していないことに加え、平和的な交流が少ないように思えるからだ。つまり、軍の意向と中国政府との意見の相違がほとんど見えてこない。
中国ではここ数年来の動きとして、台湾はもちろん南沙諸島や大陸棚の伸長、東南アジアにかかる水源地帯での政策など、とにかく領土拡大と権利の確保に向けた強硬手段を繰り返している。隣接するアジア諸国では警戒感が増しており、以前にもまして中国に対する非難の声が上がるようになった。しかし、中国の動きは止まらないのだ。
問題は、このような動きが果たして中国自身にとってプラスになっているのかどうかだ。
戦争は武力だけで行うのではないということを、中国自身がよく知っていたはずだが、どうしたことか、最近の中国では、そのような原則を忘れてしまっているようだ。例えば、台湾に対する政策は武力よりも平和的な交流による侵入政策が非常に有効だった。政府与党幹部との交流によりシンパを作り、世論の動きを中国との融和に傾けていくことで、時間はかかるけれど「台湾を飲み込む」ことが可能になるはずであった。
しかし、中国は尖閣での動きで独自の行動を取り、さらにその裏付けとして軍の力を誇示することで、そうした有利な政策がいっぺんにすっ飛んでしまう危機に直面している。台湾当局はもちろん、台湾の国民も皆こうした中国の動きに恐怖を覚えだしたはずである。「次は我々かもしれない」と。そうした警戒感を持たせたことで、中国が行ってきた融和侵入政策は終焉を迎えることになる。
また、尖閣諸島に対する中国の強力な武力による対応策は、そのほかの件で中国と対峙しているアジア諸国にとっては大きな試金石となっている。つまり尖閣諸島で試みたことが、あるいは成功したことが、ほかの係争地域でも行われる可能性があるためだ。そうなると、中国にとってはあくまで外交政策上の動きで対処しなければいけない様な問題であったはずだ。そうでなければ、ほかの問題でもアメリカなどの影響が入ってくるだけでなく、多様な戦略的なオプションが取れなくなってしまう。武断一辺倒では、交渉や外交など多彩な行動なんてできない。何より、相手国の世論を味方につけることができないため、絶対的な有利性を取ることができない。
厚かましいほどの外交力というのが中国のアドバンテージだったはずだが、袈裟の下から鎧を出したかのごとく、短絡的な行動を取り続ける中国は、これからどんどん自国に不利な情勢が積み重なっていくことだろう。
2013年2月12日火曜日
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